引用元:十年巻き戻って、十歳からやり直した感想

64名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 20:30:59.57 ID:vRIuLzlA0.net

妹は、僕の部屋で一日中本を読んで過ごすらしい。
僕が家を出て行こうとすると、妹は顔を上げて、
「おにいちゃん、大学行くの?」と聞いてきた。

「殺害したい相手の生活パターンを知りたいから、
ストーカーしに行くんだ」と言うわけにもいかないから、
僕は「そう、大学だよ。七時には帰る」と答えておいた。

今年中には、この問題に決着をつけたかったんだ。
ドッペルゲンガーと元恋人が共にクリスマスを過ごしたり
新年を迎えたりすることなんて、考えたくもなかったからね。




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65名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 20:38:33.01 ID:vRIuLzlA0.net

その頃になると、殺害方法は既に決まっていて、
ドッペルゲンガーの行動様式も大体把握して、
実を言うと、とっくに行動に移っても良い頃合だったんだ。

それでも僕がだらだらと尾行を続けていたのは、
多分、踏ん切りがつかなかったからと思う。

つまり僕は、彼が欠点を晒してくれるのを待っていたんだな。
僕は、彼が死ぬべき人間だって思い込みたかったんだ。
殺すに値する理由が、ほんの少しでも欲しかったんだよ。

困ったことに、数か月に渡ってあら探しを続けても、
彼は短所らしい短所をまったく見せないでいた。

どっちかと言うと、僕の方が死ぬべき人間なんだろうな。




66名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 20:45:07.83 ID:vRIuLzlA0.net

妹と図書館に行ってきた時に借りた本によると、
ドッペルゲンガーには、以下のような特徴があるらしい。

・周囲の人間と会話をしない。
・本人に関係のある場所に出現する。
・ドッペルゲンガーに出会った本人は死んでしまい、
 ドッペルゲンガーがオリジナルになってしまう。

ちょっと考えればわかることだけど、これらの特徴、
どちらかというと全て、僕の方に当てはまるんだよな。

友人のいない僕はめったに人と会話しないし、
同じ大学に通う僕らは出現場所が似ているし、
死ぬとしたら彼の方だし(僕が殺すからね)、
向こうの方が見た目も中身も一周目の僕に近い。

これじゃあまるで、僕が偽物みたいじゃないか。




67名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 20:50:58.15 ID:V5Br9KirO.net

それでそれで?




68名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 21:51:34.69 ID:Ut7FdsL10.net

今日はゆっくり付き合うぜ
面白いわ




69名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 21:57:05.56 ID:vRIuLzlA0.net

友人がいないと言えばさ、一周目の僕は、
仲良く談笑できるくらいの相手は、大学中に、
控え目に見積もっても二百人はいたんだよ。

当時の僕は、そいつらが皆、癖こそあれ、
それぞれにいい所を持った奴に見えたんだけど、
今になって少し離れた場所から見ていると、
どいつもこいつも、ろくでなしのように見えたね。

自分と関係のある人間が良いやつに見えて、
関係のない人間が嫌な奴に見えるのは当前だけどさ、
変な話、そういうことに僕は慰められたんだよ。

ああ、少なくとも、一周目の僕は、全てにおいて
恵まれていたわけじゃなかったんだ、って思うとね。

惨めな話だよ、そんなことに喜びを感じるなんて。




70名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 22:08:42.41 ID:vRIuLzlA0.net

かつての友人たちが、一周目とは違う顔を
僕に見せるのは、なかなか興味深かったね。

優しいと思ってた奴が利己心の塊だったり、
謙虚だと思ってた奴が自己顕示欲の塊だったりさ。

ただ、これは僕の憶測だけど、一周目において、
僕が彼らのことを良い人間だと感じていたのは、
けっして勘違いではなかったと思うんだよ。




73名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 22:19:58.26 ID:vRIuLzlA0.net

人ってのは、極端に優れた人物を前にすると、
無意識にそいつの影響を受けてしまって、
一時的に良い人間になれるんじゃないかな。

一周目の僕を前にしているときに限定すれば、
おそらく彼らは、実際に良い人間だったんだよ。
逆に、今の僕みたいなのを前にすると、
肩の力を抜いて、安心して屑になれるんだ。

僕が何を言いたいかっていうとね、
相手が嫌な人間だと感じたら、その時点で、
少なからずこちらにも責任があるってわけさ。




74名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 22:31:56.64 ID:vRIuLzlA0.net

ただ、いくら自分と関係がなくなっても、
これっぽっちも魅力を減じないどころか、
ますます魅力を増すような人間もいたね。
まあ、もちろん、元恋人のことだけどさ。

手に入らないものほど欲しくなるってのもあるけど、
二周目の僕は、下手をすれば一周目の僕より、
更に彼女を好きになっていたように思うな。
うん、崇拝していたと言っても過言ではないね。

今こそ、今こそ人生をやり直すチャンスをくれよ、
そう僕は思った。今度こそ上手くやってみせるからさ。

僕は布団にもぐり、目を閉じて、その晩も祈る。
目が覚めたら三周目が始まっていますように。




75名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 22:50:05.67 ID:vRIuLzlA0.net

さて。妹が家出してきてから、五日が経過した。

さすがにそろそろ邪魔になってきたから、
勇気を出して、「いつ頃帰る?」と聞いてみると、
「おにいちゃんが帰れ」と返された。僕が悪かったよ。

ちょうどその日、母親から電話があって、
妹がそちらに行っていないかと聞かれたから、
五日前から居座っていることを正直に話してやった。

そのことを妹に伝えると、彼女は「そっか」とだけ言い、
しばらくすると、荷物を丁寧にまとめ始めた。
こういうところは、異様にものわかりが良いんだよな。




76名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 22:57:00.94 ID:vRIuLzlA0.net

バスターミナルまでは見送ることにした。
雪が結構ひどくて、あまり街灯もない道で、
妹一人で行かせるには心配だったからね。

隣と呼んでいいのかどうか分からないくらいの
絶妙な距離を保ちながら歩く僕たちは、
あいかわらず、終始口をつぐんでいた。
一周目だったら、手を繋いで歩いてたとこだよ。

妹は、僕のことを恨んでるんじゃないかと思ったな。
まあ、とっくに嫌われてるからいいけどさ。
それに、これから人一人殺そうって人間が、
誰にどう思われるか一々気にしてたら、きりがないよ。




78名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:00:40.97 ID:dGGZMXgz0.net

>当時の僕は、そいつらが皆、癖こそあれ、

それぞれにいい所を持った奴に見えたんだけど、
今になって少し離れた場所から見ていると、
どいつもこいつも、ろくでなしのように見えたね。

分かりすぎる。自分も友達いたのがぼっちになったタイプだからすごい共感できるけど、なんなんだろうねこれ
周囲がクソに見えてしょうがないんだけど、客観的に考えるとはみ出し者はこっちなんだよね・・・




80名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:07:12.48 ID:6/lfWYe60.net

>>78
愛されないと憎しみがわくということじゃないのかね?
まして、昔は「愛されてた」なおさら。




79名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:03:49.33 ID:vRIuLzlA0.net

バスターミナルの建物は老朽化してて、
壁や床はあちこち黒ずんで、蛍光灯は黄ばんで、
椅子のクッションは破れて中身が飛び出し、
売店には薄汚いシャッターが下りていた。

バスを待つ客も数人のみで、しんとしていた。
あまりにも陰鬱な感じがして、まるでここにいる皆が、
家出先から実家に帰るとこなんじゃないかって感じ。

「汚いところ」と妹は言った。「お兄ちゃんの部屋みたい」
「情緒があるよ」と僕は自分の部屋をフォローした。




81名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:14:55.55 ID:vRIuLzlA0.net

僕と妹は、40cmくらい距離をとって椅子に座り、
カップ式自販機のココアを飲みながらバスを待った。

ひどい場所だったね。ここからバスに乗ったら、
昭和や大正に連れてかれるんじゃないかと思った。
まあ、本当にそうだとしたら、僕は進んで乗っただろうけどね。

僕がココアを飲み終えると、妹は「ん」と手を差出し、
僕のカップを自分のカップに重ね、捨てに行った。
すたすた歩く妹の背中を、僕は後ろから眺めていた。

一周目の妹と比べると、ずいぶん頼りない感じがしたな。




82名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:22:12.87 ID:vRIuLzlA0.net

突然僕は、妹に、ものすごく悪いことをしたような気になった。

妹が家出した十六歳の女の子だってことを、
僕は、きちんと配慮していたと言えるだろうか?
本当は、母親には嘘をつくべきだったんじゃないか?

そもそもこの子は、家出なんてするタイプじゃないんだ。
よっぽどの考えがあって、僕のもとに来たんだろう。

せめて本人が満足するまでの間くらいは、
かくまってやった方が良かったんじゃないか?




83名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:33:45.66 ID:vRIuLzlA0.net

妹がバスに乗り込む寸前、「なあ」と僕は言った。
「また家出したくなったら、来るといいよ」

こんな台詞でも、言うのにずいぶん勇気を必要とした。
二周目の僕は、家族に対してさえ臆病なんだよ。

振り返った妹は、めずらしく目を見開いて、
しばらく立ち止まって僕の顔を見て、
「そうする」と言って笑い、バスに乗り込んだ。

バスが行ってしまうと、僕は待合室に戻り、
帰り道に向けて、再びココアで体を温めた。
妹の笑顔を見て、やけにほっとしている自分がいたな。




84名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:37:20.49 ID:UO/D64dt0.net

なんだろう、笑ってくれただけなのに妹がかわいい




85名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:44:28.71 ID:vRIuLzlA0.net

妹は僕の言葉に甘えることにしたらしく、
三日後、再び僕の部屋を訪れた。

家にいるときに妹がすることと言えば、
一方的に僕の悪口を並べ立てた後、
「おにいちゃんは駄目だねー」と言うことだった。

そして僕の夕飯をおいしそうに食べ、
僕のベッドを占領してすやすや寝た。

翌日、父親が迎えに来て、妹を連れて帰った。
この分だと、またすぐに戻ってくるだろう。
何が彼女をここまでさせるんだろうか?




86名も無き被検体774号+2012/10/19(金) 23:56:07.72 ID:1lzDpgtC0.net

なんか人間臭い部分がすげぇ共感できるわ




87名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 00:14:06.17 ID:z9P33ux30.net

引き込まれるわ
面白いなぁ




89名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 00:59:16.36 ID:59nn09Wt0.net

げんふうけいのひと?




94名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 16:36:35.08 ID:JuWNwpCZ0.net

ところで、二周目の僕が、擁護しようがないくらい
明らかに一周目の僕より劣っているとは言え、
部分的には、優れているところもあったんだ。
第一、そうでなきゃ、やってらんないよね。

二周目の僕は、一周目の僕と比べると、
百倍くらい本を読む人間だったんだ。
それはもちろん、孤独を紛らすために、
図書室に通ったことが起因してるんだけどさ。

そして、これから話す出来事において、
その趣味がそこそこ役に立ったんだよ。




96名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 16:44:08.20 ID:JuWNwpCZ0.net

かつての僕は、恋人のことを、完全に分かった気でいたな。
五年間、ずっと一緒にいて、実に色んなことを話したからね。
ところがさ、案外、僕の知らない面も存在したみたいなんだよ。

その日も僕は、妹に踏まれて目を覚ましたんだ。
「図書館に本返すから」と妹は言った。「市民の義務だから」
まあ、午後四時にぐっすり寝てる僕も悪いんだけどさ。

図書館につくと、妹は本の束を抱えて歩いて行った。
辺りは早くも薄暗くなってて、街灯が点きはじめてたね。




97名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 16:52:29.83 ID:JuWNwpCZ0.net

僕は駐車場のすみっこ行って、煙草に火を点けた。
そこは物置みたいになってて、色んなものが散乱してたな。
錆びた自転車とか、ポールとか、柵とか、そういうもの。
ガラクタの中で、室外機だけが辛うじて息をしていた。

僕は柵に腰かけて、煙草を吸っていたんだ。
なぜかそこには、きちんとした灰皿があったからね。
二周目の僕は、こういう寂しい場所にくると、
心の底から落ち込むような人間になってたんだ。

ふと見ると、こっちに向かって誰か歩いてくるのが見えた。
どうやら僕と同じ用らしくて、手には煙草を持っていて、
――そう、それが僕の元恋人だったわけなんだよ。




10612012/10/20(土) 17:31:47.28 ID:JuWNwpCZ0.net

>>97はあれですね、「心の底から落ち込む」ではなく、
「心が安らぐ」の間違いですね。正反対です。くそったれ!




102名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 17:04:10.70 ID:JuWNwpCZ0.net

僕の元恋人はとっても礼儀正しい子だったからさ、
気まずそうな顔をしながらも、僕に挨拶したんだ。
相手が誰であれ、笑顔で挨拶してくれる子なんだよ。

僕も同じように挨拶しかえしたけど、内心、取り乱してたな。
彼女が喫煙者だなんてこと、僕は知らなかったし、
この図書館の利用者だってことも知らなかったんだ。

あれだけ話す機会を欲しがっておきながら、
いざとなると、何にも言葉が出てこないんだよ。
何か喋んなきゃ、って焦るばかりでさ。
なんとか会話を繋いで引きとめよう、ってね。




103名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 17:12:37.38 ID:JuWNwpCZ0.net

「本、借りに来たの?」と彼女は僕にたずねてくれた。
「僕じゃなくて、妹がね」と僕は正直に答えた。
「そっか、妹さんか。……君は本、読まないの?」

「そこそこ」と答えると、元恋人は嬉しそうな顔をした。
周りに本を読む人間が少なかったんだろうね。
それから僕たちは十分くらい、本の話をしたんだ。

他愛もない話だったよ。大した意味のない会話。
一周目の僕だったら、二秒で忘れるような会話さ。

でもさ、たったそれだけのことで、僕は、
嬉しさで胸がはちきれそうだったんだ。
この時間が、少しでも長く続けばいいって願ったよ。




104名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 17:21:55.14 ID:JuWNwpCZ0.net

「煙草、吸うんだね。意外だな」と僕が言うと、
僕のかつての恋人は、困ったような顔で笑った。
「彼にも秘密にしてるんだ。今の所、君しか知らない」

僕はその言葉を脳に刻みつけたね。
”君しか知らない”。実に心地よい響きだよ。

辺りが真っ暗になって、彼女は帰って行った。
僕はしばらく、彼女との会話の余韻に浸っていたな。
止まらない体の震えは寒さによるものなのか、
興奮によるものなのかは、分かんなかった。
こんなんで喜べるなんて、エコの極みだよね。

それに、このとき僕はまだ、自分のしている
致命的な勘違いには気づいていないんだ。




105名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 17:28:23.13 ID:JuWNwpCZ0.net

妹はすでに車で待機していて、僕が戻ると、
「五分の遅刻」と頭を五回たたいてきた。
一時間遅刻したら大変なことになってたと思うよ。

図書館を出てからしばらくして、妹が言った。
「おにいちゃん、さっきの女の人、仲良いの?」

「いや。僕と口をきいてくれるくらい、あの子が優しいってだけ」
「ふうん。じゃあ、私も優しいね。口きくから」
「違うな。僕たちは単に仲が良いんだよ」
「ええ、そうなの?」と妹は迷惑そうに言った。




107名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:04:05.46 ID:JuWNwpCZ0.net

街路樹や店先にイルミネーションが灯り、
いたるところでクリスマスソングが流れ、
駅前には巨大なモミの木が設置され、
いよいよクリスマスが近づいてきていた。

妹は四回目の家出から無念の帰宅をして、
僕は駅にあるカフェでコーヒーを飲んでいた。
そこからだと、広場の様子がよく分かるんだ。

そして駅前の広場は、僕の元恋人が、
待ち合わせによく使っていた場所なんだよ。
僕はそこで、彼らが落ち合うのを見張っていた。

この日は、ちょっと特別な日なんだ。




108名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:09:17.95 ID:84WLhXqL0.net

ちゃんと読んでるぞ




109名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:13:08.80 ID:JuWNwpCZ0.net

どうもです。




110名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:17:52.71 ID:JuWNwpCZ0.net

言い忘れてたけど、僕の誕生日って言うのは、
十二月二十四日、クリスマスイブなんだよ。

そして僕の恋人は、クリスマスと誕生日が被るのは
嫌だということで、一週間前に祝うようにしていたんだ。

ドッペルゲンガーも僕と誕生日が同じらしくて、
lクリスマスツリーの下で恋人と落ち合った彼は、
綺麗に包装されたプレゼントを受け取っていた。

こんな立場じゃなきゃ、微笑ましい場面だったんだど、
僕はそれを見て思わず頭を抱えたね。




111名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:26:39.97 ID:JuWNwpCZ0.net

それでね、ふと横に目をやると、おかしいんだよ、
僕とまったく同じように頭を抱えている人がいたんだ。

そいつをよく見ると、知らない顔じゃなかった。
というのも、その子は小中高と同じ学校に通っていて、
さらには大学の学部まで一緒の子だったから、
人の顔を覚えられない僕でも、さすがに覚えてたんだ。

でも、あんまり口をきいたことはなかったな。
だって、向こうも僕には言われたくないだろうけど、
ひどく話しかけづらい子だったんだよ。

彼女の視線は、僕と同じで、駅の広場に向いていた。
そりゃあ、ここにいたら、他に見るものはないんだけどさ、
彼女を見ているうちに、僕の中で何かが引っかかったんだ。




112名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:29:17.39 ID:ogMOPFN+O.net

ほうほう




113名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:39:16.67 ID:JuWNwpCZ0.net

人ってさ、一緒にいる時間が長いと、
口癖とか仕草とかが伝染るじゃないか。

だから、一周目において、僕と恋人の間には、
いろんな共通する「癖」があったんだ。

そのとき隣の女の子がやっていた、
左手で後頭部の髪をやたら触る仕草は、
偶然にも、僕から恋人に伝染った癖の一つだった。

なんだか、すごく懐かしい感じがしたね。




114名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:44:22.82 ID:z9P33ux30.net

そうきたか




115名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:58:18.78 ID:9NcAP9/U0.net

まさかの展開




116名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 18:59:52.07 ID:JuWNwpCZ0.net

彼女が顔を上げたとき、僕らの目が合った。
その一瞬で、どうしてか、僕は彼女に関して、
色んなことが分かっちゃったんだ。

その一。彼女は僕の代役に恋している。
限りなく似たような感情を抱いていると、
目を見ただけで、分かるものなんだよ。

その二。彼女は僕の元恋人に嫉妬している。
たしかに、思いを寄せている人間と
あれだけ親密にされたら、そうもなるよね。

その三。彼女には”一周目”の記憶がある。




118名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 19:10:35.94 ID:JuWNwpCZ0.net

何ていうかさ、「やり直しにおける失敗」の
スペシャリストである僕から言わせるとね、
二周目で失敗した人間に特有の感情があるんだ。
隣にいる女の子から、僕はそれを感じ取ったんだよ。

そんでさ――これについては最初から
説明しておくべきだったんだろうけどさ、
実を言うと、僕が持つ一周目の記憶には、
いくらか致命的な欠陥があったんだ。




119名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 19:18:14.75 ID:JuWNwpCZ0.net

それは、「思い出し方に制限がかかっている」ってこと。
自分はこういう特徴の人間とこういう関係がある、
みたいなことはしっかり覚えてたんだけど、
実際の名前、顔、声みたいな具体的情報は、
いくら思い出そうとしてもはっきりしなかったんだ。

「表情が豊か」とか「日焼けしている」とか、
「大人しそうな名前」とか「目つきが悪い」とか、
そういう風には思い出せるのに、だよ。

でも、二周目の僕は、そのことを軽視していたんだ。
一周目の再現をするだけの二周目においては、
記憶に制限があっても、さほど支障はないように見えたからね。
それに、記憶ってのは、多かれ少なかれ、
はじめからそういう不確かな性質があるものだから。




120名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 19:25:42.25 ID:qSxvCUMD0.net

ほうほう




121名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 19:25:47.34 ID:JuWNwpCZ0.net

さて、僕の言わんとすることはもう分かると思うけど、
以上の情報をまとめると、導き出される結論は一つ。

隣にいる女の子は、僕のかつての恋人が、
人生のやり直しに”失敗”した姿なんだよ。

そう。席を奪われたのは、僕だけじゃなかったんだ。
僕が中学の頃に告白したのは見当違いの相手で、
殺人を犯してまで取り戻そうとした恋人は人違いで、
僕がいつも影から見ていた二人は、両方とも代役だったんだ。

そして僕の本物の恋人は、いつだって傍にいたんだよ。




124名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 20:02:18.96 ID:8fxptPBA0.net

もっかい人生やりなおしてー・・・


なんて思う必要ないってことだな




125名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 20:36:53.77 ID:YEpkHUy70.net

予想の斜め上をいかれた
これは期待




142名も無き被検体774号+2012/10/21(日) 19:42:22.43 ID:BJuSVhJUO.net

おもしろしっ
続き楽しみ

書き貯めずに少しずつ書いてるのかなあ




143名も無き被検体774号+2012/10/21(日) 20:04:20.98 ID:0NqI+JUK0.net

>>142
そうなんですよー
見切り発車なんですよー




127名も無き被検体774号+2012/10/20(土) 21:19:07.42 ID:59nn09Wt0.net

これはすごいてんかいだ




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